2002年W杯、ドイツ代表の初戦は、アジアの強豪サウジアラビア。ドイツは大会前に仮想サウジアラビアということでクウェートとテストマッチを行い、7-0と快勝していたが、その時は、レバークーゼン、ドルトムント、シャルケの選手をカップ戦の日程で欠いており、またその時活躍した期待のダイスラーは、その後のオーストリア戦で負傷し代表から外れる結果に。というわけで、サウジアラビアという未知の相手をむかえての初戦は、まさにぶっつけ本番であった。
さらに、リーグ、ドイツ杯、CLにて全て2位(準優勝)に終わったバイヤー・レバークーゼンの選手がドイツ代表の屋台骨を形成するが、彼らはシーズン後半の過密日程の中で、代表のテストマッチには参加できず、しかも疲労を引きずったまま、W杯に参戦することになった。またそのうちのノヴォトニー選手は、CLでの負傷により戦線離脱、またドルトムントのヴェアンス選手も代表を外れ、チームの主力をケガで失ったドイツ代表。初戦の相手が、たかがアジアのチームとはいえ、確実に勝利できる保証はなく、一抹の不安を残して、札幌ドームでの試合が始まった。
ノヴォトニーの穴をうめる形で、同じレバークーゼンで守備的MFを務めるラメロウがセンターバックに入り、リンケ、ラメロウ、メツェルダーで形成された3バック、中盤はハマン、ツィーゲのイングランド組にシュナイダー、バラックのレバークーゼン組、そして右サイドにはブレーメンのフリングスを起用。2トップは、高さのあるヤンカーと、最終テストマッチとなった対オーストリア戦で2度目のハットトリックを達成し、勢いのあるクローゼのコンビ。
試合開始から闘志むき出しで、サウジゴールに襲いかかるドイツ代表。サイドから責めてクロスをあげ、それに前線があわせるという分かりやすい戦術ながらも、個々の一対一での争いでサウジを圧倒しており、面白みには欠けるが着実にゴールチャンスを作っていった。アジアではフィジカルが強いといわれる中東勢、サウジはファウル覚悟でぶつかっていくが、例えばクローゼがボールを持ったところへサウジの選手がタックルを仕掛けるも、クローゼはびくともせず、逆にサウジの選手がとばされてしまう体たらく。一回り大きなドイツの選手と小柄に見えるサウジイレブン。これがヨーロッパとアジアの差なのか。
ドイツの基本に忠実な攻撃パターンが実を結んだのは、19分。左サイドからのクロスにヤンカーが豪快なオーバーヘッドをかますも空振り。これが見事な"オーバーヘッドスルー"(笑)になって、右に張っていたクローゼの前に。クローゼが頭であわせて先制ゴール。ここからドイツのゴールショーがスタート。さらに、5分後にも再び、同じく左からのクロスをクローゼがあわせて2点目。さらに39分には、またもや左からのクロスに対して後ろからバラックが走り込んでヘディングシュート。これで3-0、ほぼ勝負が決まってしまう。さらに前半ロスタイムには、右サイドからスルーパスがヤンカーの足下にわたって、ヤンカーが右足でシュート。ブンデスリーガでは無得点ながら代表入りしたスキンヘッドが、我慢強く彼を起用し続けるフェラー監督の期待に応えた。さすがに4点目となれば、おおげさに喜んだりしないものだが、ファンサービスで上半身裸になり、喜びを爆発されるヤンカー。よほど嬉しかったのか。そのヤンカーの喜びっぷりに圧倒される中で前半終了。
後半からは、ラメロウに変えてイェレミースを投入。すでに4-0となり戦意喪失したサウジ相手に、けっして手を抜くことなく、公開練習かの如く、容赦なく怒濤の攻撃をしかけるドイツ代表。66分にはヤンカーに変えてビアホフを投入し、控えフォワードにも本番でのチャンスを与えるフェラー監督。一方、ノイヴィルとの途中交代が考えられるクローゼはハットトリックのチャンスを残しつつ依然としてピッチに。ヤンカーが交代する中で、自分の残り時間も少なくなっていることを感じたのか、ビアホフ投入からわずかに3分後、再びクローゼがヘディングシュート。GKデアイエの前にたたきつけるヘディングでワンバウンドしたボールはデアイエの頭上を越えてゴールへ。若干23歳のクローゼ、ハットトリックでの華麗なるW杯デビュー。
さらに、ドイツの攻撃は止まらず、5分後にはシュナイダーのコーナーキックから、ニアのバラックがサウジDFを攪乱し、後ろにいたリンケがヘディングゴール、これで6点目。76分には、大活躍のクローゼが大歓声の中でピッチを後にして、そのクローゼにスタメンを奪われたノイヴィルが出場機会を得ることに。これでビアホフとノイヴィルの2トップとなったドイツ代表。スタジアムは、活躍の機会はおろかボールに触る機会すらほとんどないカーンのスーパーセーブが見たいのか、サウジに対する応援の声が高まる。その声に後押しされて、サウジの選手が攻めるもやはり中盤で潰されてしまうのがオチ。そして84分、中央から前線のビアホフに通ったボールをビアホフがストライカーとしての嗅覚を活かして、すぐにトゥーキックでシュート。GKデアイエは、構えようとする前に飛んできた低弾道のボールに何ら対応できず、これで8-0。最後はロスタイムに、シュナイダーがゴール前にドリブルでつっかけファウルを得てフリーキック。"モヒカン"ツィーゲにものすごい形相で何やらガツンと鼓舞される中、シュナイダーが責任もって、このフリーキックを担当。右足から放たれたボールは、綺麗な弧を描いて、ゴール右上隅に。この夜のドイツ代表のゴールショーを締めくくる、シュナイダーの芸術的なフリーキックで8-0。これで試合終了。ドイツ代表は、W杯初戦にて勝ち点3、得失点差8を確保し、その後の戦いを有利なものにした。
※下記の詳細結果内の、選手名に続く(数字)部分は「Kicker」誌による採点を示す。