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「安藤正純の特別コラム vol.22」
バイエルンにおける主役と脇役の違い
安藤正純=文・写真
text & photograph by Masazumi Ando
2005年10月08日
10年ほど前、「ものまね王座決定戦」というテレビ番組が大人気を博した。圧倒的な視聴率を稼ぎ、多くの出演者の中から名人クラスの"ものまね四天王"(清水アキラ、コロッケ、栗田貫一、ビジーフォー)が生まれ、彼らの愉快な芸には腹をかかえて笑ったものだ。
実際、彼らの実力はズバ抜けていた。アキラのセロハンテープ、コロッケの形態模写、栗田の歌唱力、グッチ+冬樹のハーモニーは、これぞまさしく究極芸だと関心したものだ。彼らの才能と、本番での咄嗟の閃きに思わず唸ったのは私だけではあるまい。
誰も注目しなかったことだが、この四天王の活躍をいっそう引き立てた脇役がいた。桑野、ショウヘイ、ルミ子、ピンクの電話、末吉、榊原らだ。彼らはレパートリーが少なく、1回戦を勝ち抜いても2、3回戦まで届くことはほとんどなかった。つまり脇役の連中はそれなりの一発芸で、大トリを引き立てる立場だったといえる。
だが脇役とて、それぞれに才能の持ち主である。何かのキッカケで才能を大きく伸ばしたり、それまで本人も気が付かなかった隠れた部分が発揮できたりすると、途端にブレークする。それが桑野であり、ルミ子だった。
このように、世の中はどの分野でも主役と脇役で成り立っている。それはサッカーでも同じことだ。
現在のバイエルンで四天王と言えば、カーン、ルシオ、バラック、そしてマカーイ。彼らのポジションは他の選手で代用できない。他のポジションにもコンバートできない。パフォーマンスと給料の高さ、存在感、影響力のどれをとっても、バイエルンの四天王なのである。
では脇役とは誰か。カリミ、シュバイニー、ショル、サリハミジッチ、ダイスラーとなるだろう。各国の代表選手が脇役とは、ずいぶん失礼な話かもしれないが、四天王と比較するとどうしてもそうなってしまう。
8月5日の開幕戦を皮切りに、私は2ヶ月間で23試合を観戦した。このうちバイエルンは、リーグとチャンピオンズリーグ合わせて7試合である。ドイツ代表2試合(オランダ、南ア)がさらに加わる。
そこから感じたのは、「やはり四天王と脇役では格差があるなぁ」だった。カリミは確かにパス出しが上手い。マカーイは「アリのセンスは、トレーニング最初から僕のダッシュのタイミングと合っていた」と絶賛する。
しかしバラックがケガで欠場中に肝心の司令塔役を任されると、明らかにカリミは"過重負担"に映った。柔らかいパスは出す。だが決定的にスピードが足りないのだ。それは走るスピードではない。パスを出す一瞬の判断、パスのスピード、ルックアップして状況を見渡すスピードが、バラックより数段劣るのだ。だから相手の速いプレッシャーからボールをやすやすと奪われるシーンが続発した。湾岸諸国では通用したのだろうが、とてもバラックの代役はこなせない。90分フル出場が適わないのも当然なのだ。
シュバイシュタイガーは右でも左でも、またMFでもDFも出来る器用な青年。この点でハーグリーブスと立場が似ている。ドリブル突破は見事で、足元は確実である。弱点はコンディションが安定しないことだ。ある日は絶好調、別の日は平均点、そしてまた別の日は少々スランプ。こんなことでは監督は安心して使えない。
ショルは見事な一発芸人である。貶しているのではない。心底から褒めているのだ。途中出場ばかりだが、交代してのファーストタッチが決勝ゴールのアシストだったり、CKもFKもショルの手にかかれば、魔法のような弾道を描いて味方の頭にドンピシャで届く。悩みはスタミナの衰えとヘディングの弱さだ。
サリハミジッチの人間性は誰もが尊敬するところ。顔に似合わず温和、優しくて男らしい。プレーでのキレは数年前が絶頂期。いまは下り坂だ。左サイドからの切り込みは躍動感がある。これでシュートシーンにもっと絡んでくれたら。
ダイスラーはかつてドイツ最大の期待の星だった。だった、ということは過去形である。ミスター・ビーン似の特徴的な表情から親近感を覚えていたが、いまは「タダの人」だ。平凡なプレーしかできないし、天才の片鱗はまったくなくなってしまった。ドイツでは通じる彼のスピードだが、国際試合ではまったくの平均点。オランダ戦であたふたした姿は忘れられない。右サイドのウイングでは伸びシロも限られているのではないか。ベッカムのようにピンポイントでクロスを上げられないし、1対1の当たりからボールを奪う回数も多くない。
こうした脇役を尻目に、主役の座に近づいている選手がいる。ゼ・ロベルトだ。ゼが素晴らしいのは、左サイドでゲームを作り、チャンスをお膳立てできる点にある。ボールの扱い方は、まるで恋人にささやくような優しさ。接着剤で貼り付けたように、ピタリピタリとボールが足元に吸い込まれる。縦でも横でも、また攻守両面で中盤の要であるゼがなぜ毎回先発に選ばれないか、そちらのほうが不思議でたまらない。
ところでバイエルンの得点の少なさがどうにも気になる。8試合を消化して17点は2位のHSVと同点。ブレーメンの21点に続くから、数字上は決して悪いわけではない。だが、あれだけの人材を揃えておいて、なぜ1-0の試合を4試合も続けていたのだろうか。ボルフスブルク戦も危うく1-0で終わるところだったが、2-0になったのはロスタイムにルシオの奇跡的なプレーがあったからだ。
右サイドからはサニョールかダイスラーが、左サイドからはゼ・ロベルトかサリハミジッチがクロスを上げる。しかし、ゴールに結びつく確率は高くない。サニョールはDFラインから前線に競り上がるところまでは見ものだが、ロングのクロスを上げてもほとんどチャンスに結びつかないから、残るのは溜息だけ。細かなパス回しでペナルティエリアを撹乱しようとするゼの個人技だけが救いである。
まぁ、どこの国でもDFに力点を置いているから、爆発的な得点は期待するのは無理な注文かもしれない。あのチェルシーでさえ8試合で18点。4年連続リーグ優勝のリヨンは10試合でたったの15点なのだから。
そこで今回の結論。まったく関係ないけど、クロアチアのリーグって点が入りすぎるぞ。1位のディナモ・ザグレブは10試合で32点、最下位のプーラだって10試合で10点なんだから。これって、ザルDFということ?
(次回に続く)
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