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「安藤正純の特別コラム vol.17」
ミュンヘンに住むことにしたぞ!
安藤正純=文・写真
text & photograph by Masazumi Ando
2005年08月03日
バイエルン・ミュンヘンのジャパンツアーで気が付いたことがないだろうか。それは今夏、数多く来日した有名チームの中で、「もっとも一生懸命、サッカーをした」ことだ。
これは偉い。なぜか? 答は簡単。彼らが徹底的にプロの姿を見せたからである。来日した当日の夜、1軍半とはいえFC東京を4-0で粉砕した。前日はリーグカップを闘っていたのに、である。疲れのピークだったジュビロ磐田戦も3-1で快勝した。
バイエルンは最初から最後まで手を抜かなかった。全力で走り、集中力を切らさずプレーした。主将のミヒャエル・バラックは両試合とも90分間フル出場した。イージーミスは皆無だった。どんなプレーにも真面目に取り組み、決してヘラヘラした表情を見せなかった。真剣だったのだ。こういう姿は観客を魅了する。そして我々は彼らを尊敬するようになる。
試合の狭間となった29日、バイエルンはJFA(日本サッカー協会)を訪問。岡野会長らに記念品を授与し、今後の一層の交流拡大を確認しあった。日本サッカーの恩師デットマール・クラマー氏を帯同させ、会長、GM、国際関係部長、そしてカーンとバラックが同行した。単なる興行でやってきたチームは、ここまでやらない。そんなことをするヒマがあったら、有料の公開練習に精を出すだろう。チャラチャラやってるのを見せるだけで数百万円も入るのだ。堪えられないな、これは。
日本なんて所詮、金儲けの場所でしかない――。それが夏に来日するチームの多くの共通意識である。
だから私は、レアル・マドリードの不甲斐なさには開いた口が塞がらなかった。2週間の世界ツアーで25億円も稼ぐ彼らにとり、日本を含む世界ツアーは完全な顔見世興行。日本も中国もタイも、ベッカムが歩いただけで若い女がキャーキャー騒ぎ、ロナウドがお遊び気分でトリッキーなプレーでもすれば「オォー」とドヨめく。試合のない日は、新作映画のプロモーションを行ない、せっせと営業活動を繰り返す。
マンUとて、たいしたメンバーが残っていない鹿島アントラーズに完敗。フィオレンティーナは中田英寿しか話題にならず、ボルトンにいたっては何のための来日か不明。バルセロナは前回の来日で約束していたはずのロナウジーニョやエトーらが参加せず、主催者がカンカンに怒った。「試合ギャラを半額にする」とまで言われりゃ、今後の営業に響かないわけがない。だからまた来たのか。
1試合当たり1億円超のギャラはもちろん飛行機代とホテル代が別で、完全な手取り。お目当てのスター選手はフル出場なんてしない。ベッカムは中国でずっとベンチに座っていたっけ。ロベカルは東京ベルディの選手に試合中、「適当にやろうぜ。オレたちは疲れているんだから」と言いよってきたそうだ。
フムフム、そうか。なるほど。じゃあ、そろそろ私はここで声を大にして叫びますよ。
ふざけるな、レアル! バカにするな、バルサ! サッカー知らない米国の投資家に買収されてツアーやってる場合か、マンU!
来日チームは日本を舐めきっている。
「スターさえピッチに送り出せば、それでいい。一応プライドがあるから大敗しちゃダメだけど、大遠征しているんだから惜敗くらいは許されるよな。しっかり選手のユニフォーム売ってよ。そこらへんで商売している偽物ユニフォームの売人は取り締まってくれ。テレビのインタビューは最低▲万円からだ。記者会見では日本人選手を獲得したいといっておけば話題になる。嘘ついたっていいぞ、所詮はリップサービスなんだから。あと、キャラクター商品の開発は進んでいるの? 業種はパチンコでもサラ金でも問題ない。金さえ入ればいいんだ」
こんなところだろうな、ヤツらの魂胆は。
ではバイエルンも"同じ穴のムジナ"だったのだろうか。そうじゃない。彼らは日本を決して金儲けの手段として捉えるのではなく、"対等なパートナー"として付き合おうとしているのである。
それを証明できる材料を私はいくつも持っている。すでにワールドサッカーダイジェストの読者だったら知っていることだが、盟友マーティン・ヘーゲレがこの4月よりバイエルンの職員として働いている。国際関係部の部長だ。スター記者の職を投げ打ってまで彼を第二の人生に挑戦させたキッカケは、バイエルンのアジア重視戦略と、彼らのビジネス面でのモラルの高さであった。
マーティンは7月4〜10日に単身来日。6日間で23件の会合をこなし、日本の関係者が有名チームとの対戦で何を考え、何を望んでいるかを聞いた。そして2週間後の25日、チームに先立ち、再び来日。ホテルの自室で私と彼は、バイエルンのサッカーと日本に対する真摯な態度をテーマに語り合った。
彼らは目先の利益など追求しない。そんなのは慢性的に大赤字のレアルやイタリアのチームに任せておけばいい。大幅黒字のバイエルンは、今年の儲けや5年後の借金返済など眼中にない。それよりも日本とさらに親密な関係を築き、真のパートナーシップを結んで、両者の利益を図ることに関心を寄せている。これが意味するのは、クラブ単体の利益だけではない。ブンデスリーガの、そしてドイツサッカーとJリーグのお互いの利益が目標なのである。
もともと、真面目で勤勉な国民性という共通点がある。気心は知れているから、ふざけた試合をすれば、その後の対応も想像できる。ラテンのようなケセラセラ、アスタマニャーナの精神は通用しない。そうであるからこそ、彼は厳格に試合に臨んだ。だから我々はバイエルンに共感を抱いたのである。
ドイツでオンリーワンの存在たるバイエルンは、日本でまだまだ本当の姿が知られていない。そこで私は決心した。バイエルンとドイツサッカーの底力を味わってみよう。そのためにミュンヘンに住もう、と。
この原稿は7月31日の23時に書いた。飛行機の出発は明日だ。これから3ヶ月間、じっくりドイツを観察してくる。住まいは中心部のアパート。バイエルンのクラブハウスまでドア・ツー・ドアで30分の距離。移動がない日は、バイエルンの練習に通うのが日課となる。
<おまけのコラム>
7月29日、東京のドイツ大使館でバイエルン歓迎レセプションが開催された。仕事からの解放感も手伝い、この日、私は完全なファンと化した。お決まりのVIPご挨拶が終了すると、選手が広い庭に続々と入ってきた。
カーンと話を交わした。
疲れてない?「大丈夫さ」。最近ずっと君についての原稿を書いているよ。物語あり、インタビューありでね。試合パンフレットのインタビューもやった。全部、カルロと組んでやったんだ。「あぁ、カルロ・ビルト(KICKER副編集長)だな。毎回、よく話をしているよ。あいつには何でも喋れるんだ」。我々の会話はまるで10年来の友人のような気楽さだった。
シュバインシュタイガーとはこうだった。
元気だね。すごいスタミナだ。「いつもこんな感じだよ」。チーム唯一の地元出身選手だって?「え、そうなの?」。だってバイエルン州出身は君だけだよ。「えーと(ちょっと考えて)あぁ、そうかもしれないな」
その他、サリハミジッチ(上機嫌)、ゲレーロ(恥ずかしがり屋)、ルシオ(大人しい)らと会話をかわした。
真っ暗な庭で写真を撮影した。どれも綺麗に写っていた。これはデジカメのおかげだ。この日、私はPanasonicのLUMIX『FX-8』を手に入れていた。初めての撮影チャンスがこのパーティだった。別にPanasonicのPRマンじゃないが、FX-8は絶対にお薦めのデジカメである。CMの宣伝内容は嘘じゃなかった。スローシャッターでストロボを焚いてもブレない。そして高画質。バラックの髪の毛1本1本まで鮮やかに写っているじゃないか。すっかり気に入った。これを持ってアリアンツアレーナの内部も練習の模様も撮影してくる。ビデオ機能だって付いているんだからね。ホント、凄いデジカメである。詳細は以下のURLを参照のこと。
http://panasonic.jp/dc/fx8/index.html
(次回に続く)
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